長らく楽しみにしていた展覧会。初日凸はできませんでしたが、2日目に早速行ってきました。
基本情報
詳細はこちら(公式HP)。
会期は2025年9月16日(火)~11月24日(月)で、前期9月16日(火)~10月19日(日)・後期10月22日(水)~11月24日(月)に分かれます。
このところ特別展は3階のみでしたが、半常設となっていた4階の展示室も今回は使用しています。
邂逅
すみだ北斎美術館の年間スケジュールで展示会タイトルを見て、この展示会で葛飾応為の作品が展示されそうだなと期待していました。「美人画」といえば、ですので。
今春はメナード美術館が休館のため、春に展示されることの多かった「夜桜美人図」は同館では展示がないものと思っていました。そのため東京出張してくれるかなあとか期待。まさかの夏に展示されてましたけど。(ライネリーベの遠征ラッシュで断念)
すみだで展示されるのは何なのか気になり公式HPの展示会情報をマメに確認していたのですが…
ラインナップに挙がったのはまさかの行方不明作品「蝶々二美人図」。マジか。

よく見たら展示会チラシにも載っていました。マジか。
本作品については応為ファンの必携書である久保田2015『北斎娘・応為栄女集』に詳しいのですが、展示会では1938(昭和37)年の市立長崎博物館「浮世絵肉筆名作展」、書籍では1963(昭和38)年の講談社『肉筆浮世絵』下巻を最後として所在が分からなくなっていた作品です。実に60年。当初は公式ホームページにもそれほど詳しく載っていませんでしたが、今は本作品が「長く所在不明だった」と紹介されていますね。
なお、ちょっと調べれば分かるのですが、本作品が60年ぶりに公の場に姿を現したのは本展示会が最初ではありません。今年3月に国際フォーラムで開催されていた「ART FAIR TOKYO」にて、とある画商さんが展示していたようです。意図しない形で情報が出ているような気がするので、ここでわざわざ言及はしませんが。
作品を見て
数値として作品の寸法は知っているのですが、見てみると思ったよりひと回り小さく感じました。
絵そのものについては久保田2015所載の図版が60年前当時のものということで、全く違う印象です。所在不明の間に劣化しているとかいう話ではなくて、60年前の図版ゆえに画質の限界があったというだけでしょう。
- 画面左上の蝶の描き込み
- 座っている女性の持つ団扇の描き込み
- 立っている女性の肌色が真っ白ではなくうっすら赤いこと
- 立っている女性の下唇が笹紅であること
- 立っている女性の耳元にある輪っか状の髪のほつれ
- 立っている女性の持つ扇子の発色
などはかつての図版からは見ることが出来ていなかった部分です。
立っている女性の輪郭や座っている女性の団扇を持つ手指の感じとかいった好きな部分もよりはっきり見てとることができました。
あと興味深いのは本作の年代を文化(1804~1818)の中期と推定している点。久保田2015ではそもそも本作の年代推定がなされていませんが、他の作品は天保以降が基本路線。(参考:5月に書いた記事)
文化中期推定の理由として、北斎戴斗期の早い時期と思われる絵柄への言及が図録(後述)にあります。同じ文脈で「夜桜美人図」にも触れていてハッとしたのは余談。年代推定の文脈からはやや外れますが、笹紅が文化・文政年代に流行ったものであることにも触れられていますね。当時の風俗に対する知識があるとこういうところで役に立つんだなあ。
自分としては前掲記事のとおり応為名義の作品が文政以前にもあって欲しいと思っているので、この年代推定は非常に都合が良いです。ただし、お栄の生年は早くて1799年頃とも思っているので、中学生くらいでこれ描いたの…?天才すぎん…?という戸惑いもあるのですが。
その他の展示作品
まず意外だったのは、応為作品がもう1つ展示されています。『女重宝記』。しかもすみだ北斎美術館所蔵。知らんかった…、いや、過去の展示会でも見たことあったかな…?
そのほか北斎やその系譜(師匠・弟子)の作品も魅力的なものが多かったです。「蝶々二美人図」より長く所在不明だったらしい勝川春章「散策美人図」や、葛飾北斎「桜花美人図」・天淵道人「三美人図」あたりが特にお気に入り。
ちょっと面白かった部分だと、歌川国貞「星の霜当世風俗 蚊やき」。最近何かで見たよなあと思ったら、NHK「浮世絵EDO-LIFE」で紹介されているのを昼休みに職場で見ていたのでした。そのときの解説を思い出しながら鑑賞しました。
グッズ
いろいろ買っちゃいました。
図録(2,800円)
今回の展示会は図録があります。
展示より詳しい解説がついてますし、「蝶々二美人図」の図版もこれまで見ていた60年前のものより鮮明。前述したような今回初めて気づいた描写も割と視認できます。
ポストカード(220円)
画質は図録に劣るように思いますが、飾れるのはありがたい。
フォトフレーム(2,400円)
ポストカードを飾るためのアイテムを用意してくださっていました。商売上手め。販売元が「ハクバ写真産業㈱」であることもちょっと面白い。美術館のすぐ近くなんですよね。地域で協力してますね。

「吉原格子先之図」や「夜桜美人図」を収めている額は100均調達なので、それと比べたらだいぶ立派です。置き場所に限界がきているのは悩みどころ。
すみだに行こう!
応為推しとしてはその作品を墨田の地で見られることがとても嬉しいです。また所在不明にならないよう、然るべき機関に収まって欲しいと思います。
展示会自体も、美人画ということもあって肉筆画の割合が結構多いからか、いつも以上に見応えがある気がします。お気に入りを数点挙げましたが他にもたくさんありますし、なるべく多くの方に足を運んで欲しい。挙げた作品のうち天淵道人のものは前期のみの展示らしいので、なるはやで来館いただきたいですね。
まだまだ暑いですが芸術の秋に勤しみましょう。


コメント